AI活用の「チャットどまり」をどう変える? 中小企業の業務変革を目指す「AIクラウドワークス」

  • 2026-9-18
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AIを使い始めた中小企業が、業務の自動化へ進むには何が必要なのか。株式会社クラウドワークスは2026年9月16日、東京・麻布台の本社で「中小企業のAI活用の現在地と未来」をテーマにしたメディアセミナーを開催した。同社代表取締役社長兼CEOの吉田浩一郎氏が「AIクラウドワークス」の構想を説明し、慶應義塾大学総合政策学部准教授の清水たくみ氏と、同社執行役員AI-BPO事業開発責任者の九鬼隆剛氏が、調査結果や導入事例をもとに議論した。見えてきたのは、AIと日々の業務をつなぐ人材の重要性だ。必要な工程で外部の専門性を活用し、社内に運用の経験を蓄積する。その具体策と成果を紹介する。

■経営者の「誰かに頼みたい」に応える、AI実装のインフラへ
冒頭に登壇した吉田氏は、日本の既存企業400万社のAI化を支える「AI実装インフラ」構想を示した。特に重視するのが、専門人材の確保に課題を抱える中小企業への支援だ。

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吉田氏によると、クラウドワークスはフリーランスのマッチングを基盤としながら、人材派遣や正社員紹介、開発・運用の受託などへ事業を広げてきた。AIの普及を受け、企業が必要とする人材や支援の形も変わりつつあるという。

同社は2026年3月、AI導入を支援する「AI-BPO」の提供を開始した。特定のツールの導入に限定せず、顧客の経営課題に合わせて業務改善を支援する取り組みだ。吉田氏は、開始から2日間で10社から声がかかったと振り返り、経営者の強い関心を感じたと説明した。

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そこで聞こえてきたのが、AIを自分で使いこなす時間を確保できない、業務を自動化したくても社内に実装を担う人がいない、といった声だ。自らAIエージェントを動かせる経営者であっても、出力の確認や改善の指示には継続的な時間がかかる。吉田氏は、経営者が本来の仕事に集中するためにも、AIに関する業務を気軽に依頼できる場が必要だと述べた。

こうしたニーズを受け、8月20日に正式提供を開始したのが「AIクラウドワークス」である。AIの実装・導入に関する仕事を、技術者や専門家に依頼できるマッチングサービスだ。

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投影資料では、AI人材1万人の登録に加え、AI-BPOを含む実績として33業種・17業務領域の相談対応、5万円から2,000万円までの受注実績が示された。登録者にはAIエンジニアだけでなく、AIに詳しい営業や人事など、実務の専門性を持つ人材も含まれる。

吉田氏が目指すのは、企業にとって必要なAI実装を調達できる「AI実装のインフラ」と、個人が知識や経験を生かして稼げる「報酬のインフラ」の両立だ。必要なときに必要な分だけ専門性を活用できる仕組みによって、中小企業のAI導入と個人の活躍の場を広げようとしている。

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■AI利用企業の8割が「チャットどまり」。実装を担う人材をどう確保するか<
清水氏と九鬼氏によるクロストークでは、同社の「中小企業のAI活用レベル調査」をもとに、AI導入の現状と課題が議論された。

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調査は9月2日から8日、従業員数5~299名の企業の経営者・役員・部長クラスを対象に実施したものだ。4,172名へのスクリーニング調査では、AIを利用している企業は59.6%だった。一方、そのAI利用企業の80.9%は個人での利用やチャット機能の活用にとどまり、業務システムと連携した自動化に至っている企業は19.1%だった。

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さらに、576名を対象とした本調査で、会社や部署のAI導入を主導する「AI推進者」を十分に確保できていると答えた割合は11.1%にとどまった。AIに詳しい推進リーダーの不足を障壁とする割合も、チャットどまり企業の74.5%に対し、業務自動化済み企業は54.0%。両者の差は20.5ポイントあり、比較した障壁の中で最も大きかった。

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九鬼氏は、中小企業では1人が複数の役割を担っていることも多く、AI推進の専任者を新たに置くのは容易ではないと説明した。同社への相談も経営者から寄せられることが多く、経営者自身がAIに関心を持ち、取り組みを進める姿勢が重要になるという。

清水氏も、事業や業務プロセスを理解したリーダーがAI導入に関わる意義を指摘した。ITに投資すれば、そのまま収益性が高まるとは限らない。業務の進め方やビジネスモデルが変わり、付加価値の向上につながることで、経営上の成果が生まれるという見方だ。

実務面で大きな課題となるのが、AIと既存システムをつなぐ工程だ。本調査では、自動化する業務の見極めや手順の整理、ツールの選定は4割前後が自社で対応できるとした一方、ツール同士の連携設定は21.7%、不具合の調査・修復は17.7%に下がった。九鬼氏は、やりたいことはあっても、実装の段階で止まってしまう相談が多いと語った。

人材の確保も難航している。AI推進者の確保を検討した経験のある379名への質問では、採用・育成・外注のいずれも半数近くが中断または未着手だった。そこで議論されたのが、必要な業務ごとに外部のAI人材を活用する方法だ。すでに活用している割合は、チャットどまり企業の7.0%に対し、業務自動化済み企業は26.1%と、約3.7倍の差があった。

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なお、本調査はAI活用レベル別におおむね同数を集めた設計で、全体値や群の値は中小企業の実際の構成比を反映していない。また、外部人材の活用率の差は、外注だけで自動化が進むという因果関係を示すものではない。

清水氏は、外部の知見を取り入れながら、社内にも経験や能力を蓄積するバランスが重要だと指摘した。外部の専門家と社内の担当者が一緒に考えることで、次の改善につなげられる。

九鬼氏が提案したのは、AI化する業務の選定と導入後の運用は自社で担い、専門性の高い実装を外部に依頼する役割分担だ。運用を通じて社内に知見がたまれば、次にどの業務を改善したいかという発想も生まれる。外部人材を必要な工程で活用することが、社内のAI活用を育てるきっかけにもなるという。

<調査概要>
調査対象:従業員数5~299名の企業の経営者・役員・部長クラス
サンプル数:スクリーニング調査 4,172名/本調査 576名
調査期間:2026年9月2日~9月8日
調査主体:株式会社クラウドワークス(委託先:楽天インサイト株式会社)
調査方法:インターネット調査
※本調査はAI活用レベル別に約100名ずつの均等割付(Lv.5のみ76名)のため、全体値および群の値は実際の構成比を反映していない
※図・表の項目名は選択肢の表記を一部短縮している

■AI時代に高まる人材の役割と、人が集まる会社の価値
クロージングで吉田氏が強調したのは、既存企業のAI化を進めるために、人材が必要とされているという点だ。

同氏は、これから起業する企業では、AIや業務委託を前提に少人数で事業を運営する形が広がると予想した。一方、すでに顧客や業務、組織を持つ企業では、現在の事業を動かしながらAIを取り入れていく必要がある。その変革を実行するAI人材への需要が生まれていると説明した。

クラウドワークスは、こうした既存企業に対して必要な人材を供給するプラットフォームを目指す。吉田氏は「AIならクラウドワークス」を掲げ、AI時代の人材基盤として事業を広げる意欲を示した。

さらに、AIやリモートワークによって仕事の進め方が変わる中で、会社の役割も変化すると語った。人が実際に集まり、協力して何かを成し遂げる場所として、会社の価値が相対的に高まるのではないかという見方だ。業務の自動化が進む時代に、人が共に働く意味を問い直す言葉でもあった。

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筆者が今回のセミナーで注目したのは、LINEによる受注や請求書の作成といった、日常業務の中にAIの活用余地が示されたことだ。注文を受け、情報を転記し、顧客に返信する。そうした身近な仕事をどう変えるかを考えることで、AIは経営者にとって具体的な投資対象になる。社内の業務を知る人と、実装を担う外部人材が協力し、生まれた時間を本業の強化へ振り向ける。その積み重ねが、中小企業のAI活用を経営の成果へとつなげていくだろう。

株式会社クラウドワークス
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山田 博啓
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